ゴルフで使用する距離表示はヤード(1yd=91.44cm)なのにグリーン上ではメートル?混在している理由とは

メートル表示?ヤード表示? トピックス
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初ラウンドのときに「残り距離は156ydです」と言われて戸惑ったことはありませんか?子供の頃からセンチ・メートル単位で生活してきたのでいったい何m?って感じですよね。

「明日の最高気温は華氏68度です」と言われているくらいピンとこなかったものです。そしてゴルフのTV観戦をしていると、このゴルフ中継にも違和感があります。

それは、ホールの全長や残り距離は「ヤード」なのに、グリーン上では「メートル」で表示して実況・解説しているということです。なぜこの様に混在することになったのでしょうか。独自に調べてみました。

まずはヤードの歴史からです。中世1100年頃のイングランド国王、ヘンリー1世の足のサイズが基準となっているのが俗説で、長さの単位としてはかなりアバウト。

そしてこの足の長さを1フィート(フット)とし、この3つ分を1ヤードと定めたそうです。その後、近代になってセンチに置き換えて表示するようになったので1フィート=30.48cm、1ヤード=91.44cmと中途半端な数字になっています。

一方のメートルは、1668年にイングランドの哲学者ジョン・ウィルキンスが初めて普遍的測定単位の提案をしています。

その後「測ること」を意味する古代ギリシャ語「メトロン」が語源の単位となり、1797年にはフランスに伝わって「メートル」と呼ばれるようになりました。

具体的には「2秒の間隔を刻むときの振り子の長さ」を標準の長さ(この時点では997mm)としていましたが、地球測量の技術があったフランスは、地球の赤道と北極点の間の海抜ゼロにおける子午線弧の長さの測定に成功。

その1千万分の1の長さを1メートルとし、1795年に法律として定めました。現在では更に基準が見直され、光が真空中を299,792,458分の1秒で進む距離として定義されています。ヤードと比べてメートルはかなり精密ですね。

次にここからは国際的な動きです。大航海時代になると行動範囲が広くなり、世界規模で商取引等が行われるようになると、国家間の単位の不統一が大きな問題となってきました。

この問題に力を注いできたフランスは、前述の様に測量してメートルを定め、1875年にパリで「メートル条約」を17カ国と結びます。この時にアメリカは締結しましたが、イギリスは不参加となっています。

自国の王様から由来していることと、伝統を重んじる国民性で、独自のヤード単位は譲れなかったのでしょう。この出来事が現在のヤード表示に関係しているかと思われます。

そして紆余曲折あり、1954年の国際度量衡総会で、MKS単位系(長さの単位m・質量の単位kg・時間の単位s)を基本とすることが採択されました。

そして日本もそれに参加したことで、1959年にメートル表記にしなければならないというメートル法が国内で完全実施。

これにより英国由来のヤード表記だった既存の600以上のゴルフ場は猶予期間を経て、1975年に経済産業省の通達により、ヤードからメートル表示の変更を余儀なくされることになったということです。

しかしながら1980年代になると、衛星中継の進歩で海外のトーナメントを目にする機会が増えることになります。そこではヤード表示のゴルフ場と現地言葉の翻訳で「残り○○ヤードです」と実況されれば、再び耳に馴染むことになりました。

そして全盛期のJ.ニクラウスやT.ワトソンらが躍動する姿が映し出されると、当然のように彼らが使っているアメリカ製のクラブの需要が高まってくるのは当然の流れ。

それらのアメリカやイギリスを起源とする製品は、製造設備の理由や商業の慣習上、インチ単位を基準に設計・製造されているので、輸入クラブのシャフトの長さはインチ規格となり、再びゴルフに関してはヤード・インチを受け入れざる暗黙の了解状態になっていきます。

その後70年代から90年代のバブル絶頂期までは、国内のゴルフ場も建設ラッシュで600コース→2000コースを越えました。

新設のゴルフ場はヤード表記が標準となり、既に国の御布令でメートル表記にし直していたゴルフ場も右へ倣えで再びヤード表記に。

また、ヤード感覚に慣れていたゴルファーからの不満の声(100m≒110ydと長く感じるw)が噴出し、メートル表記のゴルフ場は姿を消していくことになりました。

そういう経緯で日本のゴルフ場の距離表示は、ヤード(草創期)→メートル(1976年)→ヤード(1984年以降)となったわけです。

しかし、グリーン上だけはメートル法が適用されたまま現在に至り、メートル表示となっています。

まぁキャディさんに「カップまで10mです」と言われれば、学校で育んできた距離の概念がありイメージし易いですが、「32ft9.7inです」ってなると???

まず計算から始まってしまうので…1ftは30.48cmだから…掛ける32だと…っていったい何センチなんだってことに。

ちなみにメートルで世界の単位統一をリードしてきたフランスのゴルフ場は現在もメートル距離表示。なのでヨーロッパツアーもメートル表示です。

話は変わりますが残り距離をヤードとメートルで間違えて、池やバンカーにボールが捕まった経験はありませんか?(私は距離計のmモードで計測していたことに気づかずに…トホホ)。

しかしこの程度でガッカリすることはありません。かつてNASAでは、管制室からヤードとメートルを間違えて操作された火星探査機が、着陸寸前に軌道から外れ、燃えながら墜落したそうです…やはり単位の統一と精密性は必要なんですねwww